アラフィフ・ララバイ
くそー、見えない~!

目を細めたり、近づけたり、遠ざけたり。

どうしたって鮮明に見えない。

読みかけの小説。久しぶりに読もうと思って開いたらこのざまだ。

「老眼だよ、それ」

必死に単行本と格闘している私を見ながら、中学三年生、絶賛反抗期中の娘、由愛(ゆめ)がこちらを指さしてケタケタ笑っている。

「そんな必死になるんなら、老眼鏡買えばいいのに」

本から視線を上げ、由愛をきっと睨む。

「老眼はね、目の筋肉さえ鍛えればなんとか食い止めれるんだって」

「ははは、そんなの迷信迷信」

「そんなことない!」

そう。

そんな情報を近所のおじいさんから聞いたもんだから、私の中で老眼鏡は絶対買わないと一種の誓いを立てていた。

「まぁ、せいぜいがんばればぁ?そのうち、老眼鏡手放せなくなってるお母さん見るの楽しみにしてるからさ」

「絶対そうはならないから安心して待っててちょうだい」

由愛は「はいはい」とあきれた様子でリビングから出ていった。

ったく、自分だっていつかは同じような目に合うってのに、もう少し優しい言葉はかけられないものかね。

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