婚約破棄された者同士、円満に契約結婚いたしましょう。

25.おかしな双子

 エンティリア伯爵家で二つの夜を過ごした後、私はラーカンス子爵家へ戻ってきていた。
 お父様とお母様に何があったのかを報告した後、私は自室でゆっくりとしていた。
 やはり、我が家というものはいい。思う存分、リラックスすることができる。

「お姉様、少しいいですか?」
「え? ああ、いいわよ。入って」

 そんな私は、聞き覚えのある声にベッドの上から起き上がった。
 その直後に目に入ってきたのは、弟のイグルと妹のウェレナが部屋に入ってくる光景だった。
 まだまだ幼い二人は、いつもと違い遠慮がちにこちらに近寄ってくる。一応、長旅で疲れている私に気を遣ってくれているのだろうか。

「お姉様、おかえりなさい。長い旅でしたね?」
「ええ、色々とあったから」
「エンティリア伯爵家はどうでしたか?」
「皆温かく迎えてくれたわ」

 イグルとウェレナは、私にそれぞれ質問してきた。
 双子であるためか、二人はいつもそんな感じである。通じ合っているからか、交互に喋ることが多いのだ。

「えっと、お姉様は明日からお暇ですか?」
「ええ、特に予定はないけれど」
「それなら、一緒にお出掛けしませんか?」
「お出掛け? えっと……明日でなければいけないの?」

 私の質問に、イグルとウェレナは顔を見合わせた。
 二人の間に、特に会話はない。ただ、この二人のことだから見つめ合っただけでお互いの気持ちはわかるのだろう。すぐに頷き合って、私の方を向いてきた。

「明日でなくても大丈夫です」
「明後日とかでもいいです。でも、近い内にお出掛けしたいです」
「そう? そうね……そういうことなら、近い内にお出掛けしましょうか」

 イグルとウェレナの提案に、私はとりあえず頷いた。
 しかし妙である。今日の二人は、なんというか変なのだ。

「二人とも、何かあったの?」
「……え?」
「……どういうことですか?」
「なんだか、二人とも変よ? 気付いていないの?」

 私の質問に、二人は再び顔を見合わせていた。
 どうやら、自覚はなかったようである。そうなってくると、益々心配だ。

「二人とも、悩みがあったら私でもお父様でもお母様でもいいから相談した方がいいわよ? 抱え込んでいてもいいことなんてないんだから」
「別に……」
「悩みなんてありません」

 私の言葉に、二人は強い否定の言葉を返してきた。それは何か悩みがあることの証明であるように思える。
 よくわからないが、私に言えるような悩みではないのだろうか。それなら、お父様やお母様に相談して欲しいものである。
 二人で悩んでも、恐らくそれ程進展はないだろう。むしろドツボに嵌っていくだろうし、誰かに相談してくれるといいのだが。
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