婚約破棄された者同士、円満に契約結婚いたしましょう。

8.父と母の評価

「しかしながら、まさかあのような好青年だったとは……」
「ええ、今の時代にあんな子がいるなんて少しびっくりです」

 お父様とお母様は、ラルード様に対してそのような評価をした。
 二人に挨拶をしたラルード様は、とても礼儀正しくて紳士的だった。故に二人とも、好感を抱いたのだろう。
 ただ、二人がこんなに高評価なのはある人物のおかげともいえるかもしれない。

「こういう言い方は良くないのかもしれませんが、ガラルト様はそういう所があんまりきちんとされていませんでしたからね……」
「うむ……ああいや、別に彼のことを批判している訳ではないが」
「でも、結局彼は自分勝手な人だった訳だものね……」
「ああそうか、確かに我々は彼の身勝手な行動によって不利益を被っている。そう考えると、段々と腹が立ってくるな……」

 ガラルト様は、両親の前でもいつも通りの人だった。
 高慢なあの態度は、誰の前でも変わらないものであるらしいのだ。
 ロナメア嬢は、そんな彼のどこに惹かれたのだろうか。それは私にとって、永遠の疑問である。

「まあ、良き婚約者に巡り会えたのは不幸中の幸いだったといえるだろう。いや、我々にとっては幸福の方が勝っているかもしれない」
「そうですね。私にとっても、なんというかいい気がします。正直な所、ガラルト様の妻になるよりもラルード様の妻になる方がいいですから」
「それは、確かにそうでしょうね。私達にとっても、嬉しいことだわ」
「うむ。もちろん、家の事情などもある訳だが、お前には幸せになって欲しいと思っているからな。親ならば、誰だってそう思うはずだ」

 ラルード様という婚約者は、私にとっても両親にとっても良き婚約者だ。
 それは間違いない。ただそう考えていくと、とある疑問に突き当たる。

「ラルード様やエンティリア伯爵家にとって、私が良き婚約者であるといいのですけれど……」
「む……」
「そんな心配をする必要はないわ。あなたは、私達の誇り高き娘よ」
「そうだとも」

 私の不安に対して、お母様は力強い言葉を返してくれた。
 お父様も、それには同意してくれている。それ自体は、嬉しいことだ。

「まあ、今度はこちらがエンティリア伯爵家を訪ねますから、その時に反応を見てみます」
「あまり気負うなよ?」
「ええ、いつも通りのあなたで行きなさい」
「はい、心得ています」

 エンティリア伯爵家に行くのは、正直少し怖かった。
 しかしながら、それをこなさなければ前には進めない。幸せな未来のために、ここは気合を入れて挨拶するとしよう。
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