バー・アンバー 第一巻

〔ここでちょっとお断わり〕

ママはふり向いてニッとばかり笑顔をつくってみせたあと椅子から立ち上がり、ウエストまでたくしあがったドレスを膝元までおろした。そして両手を俺の腰に当てて引き、今まで自分が座っていたカウンターの座席に座らせる。ボックス席から灰皿を持って来て俺の前に置くと、さきほど同様「ちょっと待てってね」とばかり手を伏せて上下に振り、カウンターの上にまとめた衣服を持って奥の控室へと消えた。これでようやく圧巻のストリップショーが終わったことを俺は悟るのだった…。

〔ここでちょっとお断わり〕;この「バー・アンバー」という作品自体が編集部によって規制or削除されないか心配です。U18の設定をしているのですが性的描写などが過激過ぎると判断されたら…。しかし実は決してアダルト本位の小説ではないのです。女流詩人の吉原幸子の詩「オンディーヌ」内にある「ふたつの孤独の接点がスパークしてとびのく…」に見られる、肉体が結ばれても決して完全には理解し得ない、結ばれ得ない人と人との間の絆、なかんずく男女間のそれ。この謂わばブラックホールのごとき得体の知れない人と人との絶対的な隔たりを理解し、(できれば)これを解消したいと、大それた主題を含む小説でもあるのです。さらに一項を持ち出すならかのE・スェーデンボルグの奇書「霊界日記」内にある〝霊界における結婚式〟を上げたい。霊界における結婚とは男女それぞれの霊が結ばれて何と霊体までもが一つになってしまうのだそうです。すなわち2人が1人になるという完全なる合体です。これを上記「オンディーヌ」の隔たりを超え行く上でのゴールと見ますと、その心理的な有り様と経過を私は小説内で模索せねばなりません。以上手前味噌ながらこのような醍醐味を持つ作品ですので、このあたりを読者におかれても、また編集部におかれてもお汲みいただければ幸いです。by多谷昇太。
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