バー・アンバー 第一巻

ダ、メ、よ、田村さん

眼前に迫ったママの胸が網膜いっぱいに広がり、ドレスの上から乳房を上に下にと揉んでしまう、両手でだ。胸を引いて今度こそ引っ張だかれると思いきやさにあらず。そのまま胸を任せながらなおも俺の髪の乱れを直している。調子に乗った俺は両の手をドレスの内側にしのばせて裸の乳房を好きなようにまさぐる。さきほどの欲求不満を充たすように上に下に、右に左に、そして乳首を指でつまんだりしつつ。そのうち頭に注射を打たれたような一瞬の痛みを覚えたあとでママはようやく俺の髪をいじくるのを止め、自らの両の手をドレスの上から俺のそれに当てて何秒か激しく揉ませたあと、こんどは俺の手首をつかんでドレスの下から引き剥がした。
「ダ、メ、よ、田村さん。おタッチバーじゃないんだから。ウフフ」と妖艶に微笑むそのママの言葉遣いが再び流暢になった。「奇抜な接待術…?おもしろいことを云うのね。さすが聞屋さんね。私…と云うか、このお店の狙いと本性を探りたい分けね。まさかボッタとは思ってないんでしょ?ウフフ」
「いやー、まいったなあ。君こそさすがだよ。突っ込みが鋭いね。いや、ハハハ、またしても欲情丸出しにしておいて何も云えないんだけどさあ…どうしてもそのボッタとかの類も疑ってしまうよ。だって普通こんなサービスなんてまずあり得ないよ。そうでしょ?どんなに自惚れたって君からそんな好意を受けるステータスや、況や男の魅力なんて俺には微塵もないんだからさあ」と云って直前の快楽の余韻を鎮めるべく俺はグラスのウイスキーを一気に飲み干した。それでもまだ喉の渇きが癒せず顎のあたりを手でさすってしまう。それと察したママがいま一つのグラスにぶっかき氷を入れてそれに水差しからチェイサーを入れようとする。直前で止めた俺がウイスキーのお代わりを注文する。もちろんダブルでだ。空のグラスをさげてメジャーカップでダブルのウイスキーを新しいグラスに注ぎ「だいじょうぶ?」と聞きながらママがお代わりを寄越す。
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