バー・アンバー 第一巻

ん?ミキ?ミキって…

中には指差してそれを笑い出す奴らもいた。笑うなどとは俺にはもちろん論外だったがしかし敬遠するのは俺もまったくご同様だった。何かのパフォーマンスでこんなことをしているのかそれとも中にいるのは狂人なのかまったく知れなかったが、こんな突拍子もないものには関わらないという常識は俺にもあった。ただ…袋の中の人物の何事かを訴えるシリアスさだけには心が打たれる。まるであの時のミキみたいだなと…ん?ミキ?ミキって…この瞬間心に稲妻が走った。次元を超えて何かと繋がるような、霊界と現実が結ばれるような…。しかしこの時目には見えぬが俺のまわりで何者か悪しきものが『ちっ』と舌打ちをしたように感じられた。タブーを犯すなと俺に警句を発しているようにも感じられる。それを合図にしたかのように袋の女のすぐうしろにいたチンピラ風の男連れ2、3人の内の一人が「てめえ、目障りなんだよ」と云いざま女をうしろから蹴飛ばした。よろける側にいた中年のサラリーが「来るな!こっちへ!」と云って両腕で強く突き飛ばす。女はたまらずに地面に倒れ込んだ。

【「わたしは絶対に、絶対にこの人に添い遂げて…わたしは、絶対に負けないぞーっ!」とでも叫んでいるような女の姿。そのイメージ。from pinterest】
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