バー・アンバー 第一巻

なに?特養を私物化…?!

俺は「ホントですよねえ」とか云って宥めながらその宥め半分に「それにしても南島さん、あなた美容院で儲け、ここでも働いて…お金が溜ってしょうがないでしょう」と話を振ると「冗談云っちゃいけないよ。あんた。儲かってるんだったら何も人の股座の世話をするような仕事しちゃいないよ」と根明に反論していたが蓋し事実だったのだろう。彼女は在日の方かあるいは韓国から日本人男性に嫁ぐかした人で、韓国人女性らしく実に気丈で且つ〝炎の女〟という風情の、実に好感のもてる女性だった。その会話の折りに「田村さん、あんたあの✕✕(件の入居者)さん程じゃないけどいつもどこか気難し気で、ちょっととっつき憎いところがあるのよ。それ、改めた方がいいわよ」と指摘されたのはここでは余計なことだが、しかしなるほど例のバー・アンバーでミキから「アナタ、ピッタリノオンナノヒト、イナイデショ?サビシイッテ、メガイッテルヨ」と云われたことに類する指摘だったなあ…とは今になって思い当たったことではある。どうも俺には〝影〟があるらしい。まあとにかく、俺がここで何を云いたいかというと、このような施設で働くヘルパーたちには雇用主との関係や3K業務遂行の上において、身心に渡る過大な負担があるということなのだ。そしてそれには各自が持つそれぞれの切実なる家庭事情や金銭状態も加味してくるのである。それにも拘らず、このようなヘルパーたちに充当すべき人件費さえも食いものにしてしてしまう悪い施設長や理事長たちが、またそのポストに天下ろうとする公務員や地方議員どもが俺は許せなかったし、況やこのような社会福祉法人の私物化を見て取った暴力団組織が、表向きダミーの医師を理事長に仕立てて社会福祉法人を〝買う〟あるいは〝転売する〟などという行為に至っては言語道断だった。ネット上の介護サポート誌では「常に国から支給される介護報酬や補助金などで確実な利益が保証され、収益性この上ない(?)社会福祉法人の売買や、また理事長や施設長のポストを、なんと数億円で取引しているという実態とか、あるいは〝息子に継がせる〟として同族経営する、挙句世襲化するなどという実態までもがあるのだ」と、そう既に暴露されている。まったく…特養とかは公器である!これを私物化し世襲化するとはいったいどういうことか?!
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