妹に彼氏を寝取られ傷心していた地味女の私がナンパしてきた年下イケメンと一夜を共にしたら、驚く程に甘い溺愛が待っていました【完】
Episode2
「お姉ちゃん、久しぶり」
「……有紗……何しに来たの?」

 ある日の仕事終わり、職場の最寄り駅の入り口付近で待っていた有紗が笑顔で声を掛けてきた。

 正直関わりたくは無かったけど、付いてこられても困るので、私は人の邪魔にならないよう端の方へ寄って話を聞く事にした。

「何の用?」
「やだぁ、久しぶりに会ったのにそんな怖い顔して」
「……用が無いなら帰るけど」
「……もう、お姉ちゃんはせっかちだなぁ。貴将くんの事は悪いと思ってるんだよ? いくら彼が私を好きになったからって、やっぱりお姉ちゃんの恋人を奪うような事はしちゃいけなかったなぁって」
「……別に、貴将の事はもういいよ。ああいう風に言い寄られてすぐに心変わりするような人は、遅かれ早かれ心変わりしてたんだろうし」
「えぇ、冷たい。それ、貴将くんが聞いたから悲しむよ? あの後私、彼とは別れたの。付き合ってみたらなんだか全然、思ってたのと違うんだもん。ケチだし、自分の事ばっかりだし、セックスも下手くそだし。お姉ちゃん、よくあんな男と付き合ってたよね。本当、見る目無いなぁ」

 有紗の一方的な話に、私は段々苛立ちを感じていた。

 貴将の事を擁護するつもりも無いけど、人から奪ったくせに何て言い草なのだろう、有紗はどこまで最低な人間なのだろうと。

 正直話するしたくないけど、ここで有紗を置いて帰ったところで用件が済まない限り、何度でもこうして現れるだろう事が予想出来ているから、帰るに帰れない。

 それに、有紗が何をしに来たかは何となく分かっている。多分、私に今、新しい彼氏がいるかどうか偵察しに来たのだと。

 職場の最寄り駅(ここ)で待っているという事は、まだ、今の住まいは知られていないという事で、恐らく百瀬くんの存在も知らないという事。

 だから、何としてでも百瀬くんの存在は知られたく無かった。

 いくら彼が誰にも心変わりしないと断言していても、不安はあるし、何よりも、私と有紗のいざこざに大切な百瀬くんを巻き込みたく無かったから。

 それなのに……、

「亜夢、お疲れ! って……ごめん、話し中だった?」
「……百瀬、くん……? どうして?」

 今日は用があるから迎えに行けないと言っていた百瀬くんが何故だか突然姿を現し、驚く私と有紗の元へ歩いて来たのだった。
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