妹に彼氏を寝取られ傷心していた地味女の私がナンパしてきた年下イケメンと一夜を共にしたら、驚く程に甘い溺愛が待っていました【完】
(何なの? 気に入ったって……私の何を見て気に入ったって言うのよ?)

 ナンパ男の言葉を真に受けるつもりは無いけど、彼のその言葉は少し気になった。

 私は特別美人でも無いし、強いて言えば地味で平凡な部類に入ると思う。

 そんな私の何を気に入ったというのだろうか。

(女なら誰でもいいとか、そういう感じだよ、絶対)

 そうだ、ナンパ男の言う事なんて真に受けてちゃ駄目だ。気にしちゃ駄目だ。

「あの、本当に! こういうの、迷惑です! 離して!」

 ここで怯んだりしてはいけない。

 毅然とした態度で男を跳ね除けようとすると、

「――ごめん、怒らないで。冷やかしとかそういうんじゃない。ただ、おねーさんがあまりにも思い詰めた表情(かお)してたから、どうしても放っておけなかったんだ」

 今までのおどけた感じとは違って急に真面目な顔をしながらそう口にした彼に、私は思わず動きを止めた。

(思い詰めた顔、してた? 不幸のどん底にいるような? まあ、あながち間違いじゃないけどね。実際、全て失った感じだし……)

「おねーさん? 俺で良ければ話聞くよ?」

 動きを止め、何も答えなくなった私に、彼は言う。

(別に、話したからってどうなる訳じゃないし……)

 誰に話したところで、全てが無かった事になる訳じゃない。

 それでも、こうして一人で落ち込んでいるよりは、誰かに話した方が、楽になれるのかもしれない。

(こんなこと、知り合いには、話せないもんね……)

 どうせ行くところも無い、時間だけはある、暇人な私。

 こんなナンパ男の口車に乗せられてしまうのは癪だけど、妹に彼氏を寝取られた話しをするなら、見ず知らずの人間相手の方が良いに決まってる。

 そう考えた私は、

「……私、今すっごく飲みたい気分なの。付き合ってくれる?」

 全てがどうでも良くなって、話を聞いてくれるなら誰でもいいやと、気付けば自分から声を掛けてきた年下の男の子を飲みに誘っていた。
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