狼上司と秘密の関係
☆☆☆

遊園地内のアトラクションをあらかた乗り終えた時、周りは夕暮れに包み込まれていた。
園内はオレンジ色に輝き、それを観覧車に乗ったふたりは見下ろしている。
「もう少し遅い時間だとイルミネーションが綺麗なんだけどな」

まだその時間には早い。
「そうですね。だけど夕焼けもすごく綺麗」
太陽が山間に沈んでいく景色はとても移しくて幻想的だ。

オレンジ色の光を周辺へ投げかけながらも、自分は姿を消していく。
その様子がなんとなく儚く感じられた。
「今日は楽しかった?」

「はい、とても」
朝、ウサギの着ぐるみにもらった風船はもうしぼみかけているけれど、千明の胸は膨らんでいた。
こんなに楽しい休日は久しぶりのことだった。

「今日はもう少し俺に付き合ってくれる?」
まだなにかあるんだろうか。
1日遊んで、プレゼントまでもらって、もう大満足の千明が首をかしげる。

「もちろん、付き合います」
千明はそう言ってゴンドラから夕日を見つめたのだった。
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