狼上司と秘密の関係
☆☆☆

ふたりの後をつけるような格好で体験施設へ到着した千明は、すぐに女子更衣室へ向かった。
「おはよぉ」
ロッカーに荷物を入れいていた梨江にいつも通り声をかける。

梨江はなぜか驚いたように振り向いてぎこちなく笑顔を浮かべた。
「お、おはよう」
「どうしたの、そんなに動揺しちゃって」

千明は梨江の隣のロッカーを開く。
「別に、動揺なんてしてないよ」
そう答えている顔がすでに赤い。
なにかあったことは明白だった。

千明は梨江にグッと体を近づけて「今日、晋也と一緒に来たでしょ」と囁いた。
その言葉に梨江が口をパクパクさせる。
人の恋愛に助言するときにはパワフルなのに、自分の恋愛に関してはちょっと奥手みたいだ。

「見てたの!?」
「偶然見ちゃったの。私たちが後ろから歩いて来てるの、気がついてなかったでしょ」
そう指摘すると驚いたように目を開き、それから「私たちって、どういうこと?」と、質問されてしまった。

今のは完全に墓穴をホッてしまったことになる。
千明は「あっ」と声を上げたまま硬直した。
「そう言えば千明も昨日と同じ服だねぇ? どこかに泊まったの?」
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