狼上司と秘密の関係
千明が大和の顔を覗き込んだときだった。
ふいに顔を上げた大和が獣のようなうめき声を喉から鳴らした。
「菊池さん?」

首をかしげた千明へむけて突然口を開く。
その口の中に牙を見た次の瞬間千明の唇は大和によって塞がれていたのだ。

驚き、目を見開いて硬直する千明。
そんな千明にお構いなく大和は唇を何度も付けたり離したりを繰り返す。
その喉からは獲物を欲しがる獣のうねり声が聞こえ続けてきている。

「ど、どうしたんですか!?」
しばらく呆然として座っていた千明が我に返ってベンチから立つ。
まだ苦しそうに表情を歪める大和が銀色の目で千明を睨めつけた。

そして一言「逃げろ」と呟いたのだった。
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