君の隣は誰にも譲れない

自覚

 
 まだ、フラれていない。でも時間の問題だろう。あと一月だ。抱きつかれることは全くなくなった。たまに顔を合わせると彼は何も言わず、思い詰めた顔でただじっと私を見ている。何か言いたそう。別れたいのかもしれないと思い始めた。

 会社から送ってもらって柴田さんの車を降りた。マンションの前に綺麗な女性が立っている。私は会釈して通り過ぎようとしたら、腕を引っ張られた。

「あなた、柴田さんの運転する車から降りてきたわよね」

 え?柴田さんを知っている?誰だろう?綺麗に巻いた栗色の髪。ブランドの靴にバッグ。それに派手な色のワンピース。ただ者じゃないのはわかります。いわゆるお嬢様風情。

「あの、失礼ですがどなたですか?」

「ちょっときて」
 
 そう言うと、マンションの下にあるカフェへ連れて行かれた。

「私はね、京介さんの大学の同窓生で、元カノよ」
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