水槽の人魚は、13年越しの愛に溺れる
 海里が受けてきた傷や辛い経験には遠く及ばないかもしれない。真央は海里にはなれないから、ありがた迷惑だと突っぱねられても。真央は今度こそ強く、海里の腕に纏わりつくと決めた。



「まぁ、宣言しちゃったならやるしかないわよね。返済プランは?」

「1日3回公演、1席1000円と入場料1500円。1800席を365日満員にして……2年間か、680席を5年間?」

「千円は安いだろ」

「うん、安い」

「平日の閑散期はそれでいいとして、土日祝日はもう少し上乗せしたいわね。どうして1000円なの?」

「な、なんとなく……。3000円以下ならチケット買ってくれるかなって……」

「パフォーマンスと入園料込み3700円で長時間待機するより、別途課金で席確約2500円ならどっちがいい?って話よ」



 仲間たちの指摘は最もだ。

 有名な水族館だと、いるかやシャチなどと人間が泳いだり芸を披露するパフォーマンスショーの観覧費込で入場料が発生するが、混雑時は席の確保をする為数時間前から場所取りを余儀なくされる。

 一方、真央がやりたがっているマーメイドスイミングのショーは全席指定で、事前に場所取りをする必要がないのだ。

 そう考えてみると、もっと金額を上げても十分人が集まるような気がする。



「最初の一ヶ月はそれでいいとしても、多分プラチナチケット化するよねぇ。2000円でも安いくらいだよ」

「うん、うん。私もそう思う。初日は680席満席って指示されたけど、余裕だよね?」

「影響力ある奴らに片っ端からPプライベートMメッセージ送って捌くか。一回1000円を手売りなんてしようもんなら、大騒ぎになる」

「プレビューショーは1回1000円。来た客には観覧後、値段についてのアンケートを記入してもらう。本導入時はそのアンケート次第で値段を決めようぜ」

「プレビューショーだから、SNSでの感想はいいとしても、値段についての公言は不可にしましょう。最初の一回だけ実は1000円でしたなんて話が出てきて、後々ゴネられても困るわ」



 真央が瞬き一つしているうちに、次々と詳細が決まっていく。
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