水槽の人魚は、13年越しの愛に溺れる
 即答するなど思わなかった海里は目を見開くと、12年前のように優しく微笑み──真央の上へうつ伏せに寝転んだ。

(あったかい……)

 海里の体重を感じながら密着した真央は、ふわふわと夢見心地な気分で目元を緩ませる。心地よくて、このまな眠ってしまいそうだ。

「いやらしく、男を誘うくびれだな」

 真央が意識を手放しかけていることに気づいたのだろう。海里は真央の意識が夢の中へ誘われてしまわぬように、くびれを指の腹を使って撫で付ける。



「海里……。そんな、所……」

「ここが揺れる姿を見て、何人の男を欲情させてきたんだ」

「そんなの、わからな……」

「この中を……俺以外に触らせたことは、ないだろうな」

「な、ない……っ。ない、よ……っ!」


 海里はフィッシュテイルの内側へ指を滑り込ませると、両手を使って脱がし始めた。

(海里の言葉選び、際どすぎるよ……っ)

 真央を押し倒し、身体を密着させた状態で寝転ぶ海里の姿を遠くで見つめ、会話を盗み聞きしている人がいれば──愛し合っていると勘違いされてしまいそうだ。

(足を海里以外の男に触らせたことは、ないかって……話だよね……?)

 マーメイドスイミングのショーでマーマンと手を握る必要はあるが、足を触らせたことなどない。半信半疑になりながらも真央が否定すれば、海里はスルスルとフィッシュテイルを足から引き抜き、人魚の抜け殻を手にした。


「これからも」

「これから……?」

「ここに触れていいのは、俺だけだ」


 フィッシュテイルを手にした海里は、真央の胸元へフィッシュテイルを掛け布団のように置く。
 真央が不思議そうにその光景を見守っていれば、海里は真央の右足を掴むと、唇を太腿へ口づけた。

「か、海里……?」

 太腿に唇を近づけ、優しく口付けを始めた海里は、真央の様々な場所に唇を触れる。

 頬、額、耳、指──


 海里から口付けの嵐を受けた真央は、唇から感じる海里のやさしさを受け取り、なんだか悲しくなっしまった。

「……真央……泣いて、いるのか……」

「ごめん、なさい……」



 真央は胸の上へ掛け布団代わりに掛けられたフィッシュテイルを抱きしめて泣きじゃくる。
 何故真央が泣くのかわからない海里は太腿から手を離すと、真央の頭を優しく撫でつける。

 その優しさが、今は辛い。

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