身代わりお見合い婚〜社長に溺愛される365日〜

親友と好きな人が結婚することになりました。

 次の日、社長は私のところに姿を現さなかった。

 安心した気持ちと、寂しい気持ち。相反する気持ちに心が揺れ動く。

 退勤後、携帯を見ると有紗から大量のラインメッセージが届いていた。

『ごめん』『もう無理かも』『自分じゃなくなりたい』『家出した』等々。

 短文だけれど、有紗からの悲痛な叫びが感じ取れて、慌てて電話する。

 長いコール音が続いたあと、ようやく繋がった。

『もしもし、有紗⁉』

『すみません、悠斗です』

 申し訳なさそうな悠斗君の声だった。

『あ、悠斗君。有紗は?』

『有紗は泣き疲れて寝ています。今、僕の家にいて、さっきまで暴れていました』

『暴れるって、なにがあったの?』

『それは僕の口からはちょっと。とにかく僕一人の手には負えないんで、芳美さんも僕の家に来てもらってもいいですか? 狭いし、なにもないですけど』

『それは全然構わないけど……わかった、今から行くね。住所はあとで送って』

 電話を切ると、すぐに住所が送られてきたので、家に帰らずそのまま電車に乗り込む。
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