君の世界に触れさせて
 今の笑顔も、同じ理由で作られたのかもしれない。


 だけど、柚木先輩が言った理由のほうが、しっくりときた。


「咲楽」


 私は咲楽の前に座り、名前を呼ぶ。


 トーストを食べきった咲楽は、水を飲みながら、視線だけ私に向ける。


「ありがとう。大好き」


 動揺して、咲楽は少しだけ水をこぼした。


 お母さんから布巾を受け取り、テーブルを拭く。


「……急にどうしたの」


 照れ隠しで少しだけ冷たい言い方になるのが、咲楽らしくて可愛い。


「咲楽と友達で幸せだなって思ったから、伝えてたくなった」


 照れて困った表情が本当に可愛らしくて、私は微笑ましくなる。


「……私だって、依澄のことが好きだよ」


 咲楽にそう返されて、私も咲楽と似たような反応になってしまった。


 お互いに恥ずかしい時間となり、それがおかしくて、私たちは吹き出すように笑う。


「仲良しさんたち、ゆっくりしてたら遅刻するよ」


 お母さんに言われて、私は急いでトーストを食べきる。


 そして洗面所に行き、咲楽に言われた通りに棒立ちをする。
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