君の世界に触れさせて
 それでも私は、夏川先輩の写真を諦めることはできなさそうだった。


「だとしても、少しくらいわがまま言ってもいいんじゃない?」


 咲楽は私の葛藤を見抜いたようで、頬杖を付きながら言う。


「咲楽……私の話、聞いてた?」
「聞いてたよ。でも、依澄は夏川栄治の写真を見るために、ここに来たんじゃん。簡単に諦められないなら、諦めなくてもいいと思う」


 随分と自分勝手だと思う反面、咲楽の言うことも一理あると思ってしまった。


 だけど、夏川先輩のあの表情を知ってしまった今、初対面のときのように詰め寄ることはできない。


「よかった、古賀ちゃん、まだ教室にいた」


 これからどうしていこうかと考えていると、背後から声をかけられた。


 振り向くと、佐伯先輩がドアから顔を覗かせている。


「こんにちは、佐伯先輩」


 佐伯先輩は「こんにちは」と返しながら、教室に入ってくる。


「古賀ちゃんさ、ゴールデンウィーク、暇?」


 唐突なお誘いに、反応が遅れる。


「今のところ予定はないですけど、どうかしました?」
「撮影会に行かないかなと思って。栄治もいるから」


 私は耳を疑った。


 頑なに写真を撮ると言わなかった夏川先輩が、撮影会に参加する?
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