君の世界に触れさせて
 氷野に教えてもらった場所に行くと、古賀は外階段で膝を抱えて座っていた。


 言われていなければ見つけられなかっただろう。


「……古賀」


 僕が声をかけたことで古賀は顔を上げる。


 落ち込んでいることは、見ればわかった。


「夏川先輩……」


 表情だけでなく、声までも泣きそうだ。


 僕は階段を登り、古賀の隣に座る。


「氷野に聞いたよ」


 古賀は視線を泳がせて、また丸まった。


 これほど落ち込んでいる古賀に、なにを言えばいいのだろう。


 いろいろと伝えたいことはあるはずなのに、古賀を前にすると、どれも言うと傷付けるような気がしてくる。


 僕も古賀も言葉を発しないから、ただ時間が過ぎていく。


『私、夏川先輩の写真、好きです』


 ふと、古賀のまっすぐな言葉を思い出した。


 そうだ。

 僕が思っていることを、正直に言えばいい。


 下手に取り繕うよりもきっと伝わるだろうし、迷ってしまって不信感を与えるより、全然いい。


 ただ、どうやって話を切り出せばいいのかが、わからない。


 どんな話なら、古賀は耳を傾けてくれるだろうか。


「ねえ、古賀。少しだけ、僕の過去話に付き合ってくれる?」


 古賀がずっと知りたそうにしていたことを思い出して、僕は古賀にすべてを話した。
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