偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
「輝さんがそう言ってたの。家の事情で結婚出来なかった悲恋だって」

「何それ聞いたことない。どうせ適当言ってるんでしょ。花穂への嫌がらせじゃない?」

「でも、その相手って言うのが私も知ってる人で、全くの嘘とも思えない」

「そうなの?」

 伊那が一転顔を曇らせる。

「私も知ってる人? 名前は?」

「朝宮百合香さん。伊那は面識ある?」

「知ってはいるけど、交流はないよ。朝宮さんか……確か三十歳くらいで、独身だったよね」

 伊那は思い出すように目を細めているが、有効な情報はなさそうだ。

 花穂は小さく溜息を吐いた。

(ただの噂だと思いたいけど、響一さんは朝宮さんを特別扱いしているような気がした。それにときどきの嘘)

 花穂に行動を隠すようなあの嘘をついたとき、一体何をして誰と居たのだろうか。

「きっとただの噂だよ。どう考えても元婚約者の嫌がらせの可能性が高いんだし、あまり落ち込まない方がいいよ」

「分かってる。悩んでいても仕方ないよね。結局は本人に聞くしかないんだから」

 けれど問い質したときに何と言われるのか怖ろしい。
< 193 / 214 >

この作品をシェア

pagetop