旧財閥家御曹司の愛妻渇望。 〜ご令嬢は、御曹司に甘く口説かれる。〜
まるで物語のよう。


 ここは煌びやかな大ホール。
 旧財閥家嘉納家が所有している別宅の一つだ。今は、嘉納家主催のパーティーへ参加している。


「俺は、碧奈(あおな)ちゃんのことを愛してしまったんだ!」

「ごめんなさい、お義姉様〜」


 目の前には、婚約者である男と義妹の碧奈。
 それはまるで、今流行っている悪役令嬢モノの小説やアニメみたいなシーンだ。

 まさか、自分が現実世界で経験するだなんて夢にも思わない……というか、あんたたちの家でもないのにそんなことをべらべらと。常識的にあり得ない。


「あら、そう。……おめでとう?」


 この場を早急に収めたくて微笑みながらそう言って終わりのつもりが婚約者の男がまた話し出す。


「だから、結鈴(ゆり)には悪いけど婚約破棄をしてくれ」

「あら、石橋様? 私たち、婚約は白紙となっていますけど……ご存じなかったかしら」




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