まじないの召喚師3


空気を変えるように、先輩が話を戻す。



「で、合宿って、どこでする気だ? お前達の家じゃあないんだろ」



「うん。………この家を使わせてよ」



雷地が側の荷物を指差して、準備はできていると親指を立てた。



「今や我々は当主の座を勝ち取ろうとせん同士だ!」



「合同訓練だよ。悪い話じゃないでしょ」



確かに、一考の余地ありだ。

一般人な私はともかく、先輩には、歳の近い彼らとの訓練はとても魅力的でもある。

先輩も顎に手を当て、断るのは惜しく思っていそうだ。

しかし、簡単に頷くわけにはいかない。



「なんでこの場所が分かった」



火宮の家を訪ねるならまだしも、他人であるはずの天原の家を訪ねられたのだ。

しかも訓練に使うなど、一般家庭に不釣り合いな言葉ではないか。



「タケミカヅチに聞いたよ」



「イワナガヒメに聞いたのだ」



契約式神に聞いたらしい。

誰が話したんだろう。



『オモイカネでしょ』



ツクヨミノミコトが失礼な事言ってくる。

イカネさんはそんな事しません。



「高位の神は全てを見ている。対策もせず逃れられると思うな」



「そうなると、響は警戒心が強いよねぇ。ほとんど居場所が分からない」



「………まあね」



『そりゃあ、響少年はほとんど私の提供した空間にいるんだから、簡単には見つからないさ』



ツクヨミノミコトが提供した空間で何をしているかは、藪をつつくことになるのは想像に難くない。

てか、いつの間に連絡をとったんだろう。



『きみには教えてあげないこともないけど?』



知らないほうが幸せってこともある。

聞いてしまえば、恐怖の実験に繋がりそうな予感がした。



『………だね』



それよか、イカネさんに罪をでっち上げようとした事は許すまじ。



『冗談じゃん。すぐ見破られる嘘なんてノーカンだよ』



嘘ゆったな。

後でみっちり話し合おうと決意したところで、リビングの扉が開いた。

新しい来客だ。
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