ひと晩の交わりで初恋の人の子どもを身ごもったら、実は運命の番で超溺愛されてしまいました~オメガバース~
「……っ!」
 現れたのは、超がつくほどの整った小さな顔だったのだが……。


 え?
 

 く、久我さん……?


 無意識に私は、噛み痕のあるうなじへと手を滑らせていた。

 大きく目を見開いた私に、ふと目の前の男がふわりと微笑みかける。

 夢じゃないかと思った。

 いや、夢のほうがいいと私は願っていた。

 しかし、どこからどうみても忘れることない、愛しい人の顔――だった。

 
 そして五年前よりも、ますます大人の男の魅力に磨きがかかった間違いなく私の初恋の人――久我鏡哉(くがきょうや)さんの顔、まさにそのもの。




 真ん中で分けられた少し長めの前髪を持つ漆黒の髪。

 左右対称に、バランスよく配置された目と鼻と唇。
 
 瞳には、グレーのカラーコンタクト。

 もともとの造作が完璧すぎることもあって、さらに鏡哉さんの美貌をカラーコンタクトが引き立てている。
 
 背丈も私の記憶のなかにある久我さんよりも、さらに伸びているようだ。

腰の位置がもっと高くなっている。

 黒い服だからこそ全体的にシャープに見えるが、よく見れば上半身も下半身もがっしりと鍛え上げられていた。

 改めて、鏡哉さんは誰が見てもひとめで分かるほどの圧倒的アルファなんだという認識を持つ。

 隠しきれないヒエラルキートップである絶対王者の持つ気品と色香に、私のオメガの部分がひどく疼きはじめる。

 
 嫌な予感がした。

 まだまだ先だというのに発情期が訪れそうな、そんな前兆を身体の最奥で感じる。


 けれど今、私が発情を起こしたとしても、反応するのは久我さんだけだ。

だって、私のうなじを噛んだ相手……なのだから。

 互いの気持ちはどうあれ、この世で唯一、私の発情フェロモンに反応してしまう特別な人なのだから。






< 12 / 18 >

この作品をシェア

pagetop