教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!
「シスターはずっとエレノアに謝ってたよ。エレノアのことを恨んでいない!」
「そうよ、エレノア。リリアンはあなたを愛していたのに、守れずにずっと後悔していた」
「リリアンは君の幸せをずっと願っていたよ」

 祖父母とモナが次々にエレノアに語りかける。

「母子して後悔しあっていたんだな。もう、その荷物を下ろして良いんじゃないか? そうしないと母上も安心出来ないだろう」

 隣にいたイザークも立ち上がり、エレノアに優しい表情をして言った。

(あ……)

 エレノアの心の奥深くにあった後悔やドロドロとした感情が、瞬間、ふわりと落ちていく感覚が、した。

「エレノア、私たち、シスターのためにも幸せにならないと!」
「エレノア、リリアンもそう望んでいるわ」

 モナと祖母が泣きながらエレノアを抱きしめる。エレノアも涙を流しながら頷いた。

 祖父はイザークに向き直ると、頭を下げて言った。

「どうか、エレノアをよろしくお願いいたします。幸せにしてあげてください」
「はい。命にかけても」
「ザーク様……重い」

 祖父の言葉に、イザークが真面目な顔をして答えるので、エレノアは思わずツッコんでしまう。

 その場にいた皆がエレノアの言葉に笑顔になった。

(死に勝る愛情……か)

 離れの庭でイザークと一緒に見たミモザの白い花が、エレノアの脳裏に蘇る。

「私、もう幸せですよ!」

エレノアの笑顔に、イザークの顔も蕩けた。



「ザーク様、今日はありがとうございました」
「いや、俺も君の大切な人たちに挨拶がしたかった」

 エレノアとイザークは、スミス伯爵領の墓地に来ていた。

 リリアンの眠る墓石の前に二人で並び立つ。

「シスター……、お母さん、私を守ってくれてありがとう。私、幸せだからね」

 祖父母に用意してもらった花束を墓石に添えて、エレノアは呟いた。

「母上、エレノアは俺がこれから一生守りますので安心してお休みください」

 墓石前にしゃがむエレノアの横に、イザークもしゃがみ込み、リリアンに誓う。

「ザーク様、だから重いです」
「そうか? 俺はいつも真剣なんだが……」

 ふふ、と笑うエレノアに、イザークは真剣な表情で覗き込む。

「私だって、ザーク様を守りますからね?」
「……もう守ってもらっている」

 エレノアがイザークを覗き込み返すと、両手で身体を起こされ、その場で抱きしめられる。

 もう季節ではないというのに、ミモザの香りがエレノアの鼻を掠める。

 その香りに安心して、エレノアはイザークに身を預けた。
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