教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!

2.騎士様の目的は?

「今日はオレンジを貰おうか」
「……ありがとうございまーす」

 翌日、騎士はまた行列に並んでやって来た。

 今日は何も言わず、一言目は注文だけ。

(よっぽどここの果実飴が気に入ったのかな?)

 エレノアは営業スマイルを引き攣らせながらも、騎士にオレンジ飴を手渡す。

 すると騎士は、ガシッとエレノアの手を掴み、整ったその容姿、空色の瞳でエレノアを見つめた。

「エレノア殿……」

 きゃーー!!

 行列に並んでいたご令嬢たちから黄色い叫び声が飛んだ。

 まるで顔の良い騎士が、飴屋の売り子を口説いているかのような構図。

(これって、騎士様にとっても不名誉なんじゃない?)

「……営業妨害ですよ?」

 掴まれた腕を静かに払い、エレノアは努めて笑顔で騎士に言った。

「す、すまない……!」

 騎士は慌ててエレノアから離れると、スゴスゴとイートスペースに向かった。

(何なんだろう、あの人は。私を連れ戻しに来た教会の差金じゃないのかしら?)

 素直に謝罪をして、しょんぼりとイートスペースに向かう騎士が、何だか可愛い、とエレノアは思った。

 昨日の飴を食べている姿といい、その可愛らしさに、警戒心剥き出しの自分がバカみたいに思えた。

 飴を口にして、顔を輝かせている騎士を見て、エレノアはまた顔を綻ばせてしまう。

 気付けば、騎士はまたあっという間にご令嬢たちに囲まれてしまっていた。

(しかし、連日飴を食べに来るなんて、騎士団って暇なのかしら?)

 そんなことを思いつつ、エレノアは今日も果実飴を完売させた。

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