教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!
「す、すまない……」
「い、いえ……」

 お互いに真っ赤になりながら、その場に佇んでいると、サミュが声をかけた。

「エレノア様、庇っていただきありがとうございました」
「そ、そんな。かえって迷惑をかけてすみません」

 人懐っこい笑顔でお礼を言うサミュに、エレノアが慌てて誤りながら会釈すると、サミュはエレノアの身体を起こさせてニカッと笑う。

「嬉しかったですよ……やっぱりあなたは、僕の女神です」
「め……」

 サミュの大袈裟な言葉にエレノアが顔を赤くすると、すぐ後ろから冷たい空気が流れた気がした。

「わ、団長!! 奥様に手を出したりなんてしませんよ!! ただ、僕はエレノア様を崇拝しているってだけで」
「どんな目でもエレノアを見るのは許さん」

 慌てて弁解するサミュ。どうやら冷たい空気の正体はイザークだったようだ。

 イザークはエレノアの前に歩み出て、エレノアを隠すように言った。

「ヒューヒュー! お熱い!」
「サミュ〜、お前が悪いぞー」

 イザークの言葉に、その場にいた騎士たちからどっと笑いが起こった。

「そ、そんな〜」

 サミュはそんな騎士たちの野次を聞きながら、泣きそうな顔で笑っていた。

(あ、やっぱりいいな。空気が変わった。さっきの第二隊の人……あんな人も騎士団にいるんだ)

 第一隊の騎士たちを見回しながら、エレノアは先程のグランの態度に不安を覚えた。

「……ところでエレノア、これは俺に……?」

 思考を巡らせていたエレノアに、イザークがすぐ横に立ち、先程受け止めてくれたバスケットを差し出した。

(あ、そうだ、忘れてた……)

「団長、それは褒賞ですよ」

 エレノアが答える前に、サミュがやって来ていたずらっぽく言った。

「何……?」
「今からトーナメント式で稽古をしますので、勝者がそれを食べられます」
「……それは俺も参加して良いんだろうな?」

 サミュの説明に、イザークが低い声でギラリと言う。騎士たちからは、「ええー」とか「そんなー」といった悲鳴が上がった。

「ザーク様の分は避けてあるから参加しなくても……」

 ポツリと呟いたエレノアに、エマがポン、と肩をたたいた。

「エレノア様、黙っておきましょう? イザーク様の戦う姿見たくありません?」
「それは……見たいわね」

 コソッと耳に入ったエマの誘惑に、エレノアは負けて、イザークには黙っておくことにした。
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