教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!

3.カーメレン公爵家へ

「うわ、でっかい………」

 注文の果実を籠に詰め、お店から徒歩でやって来たエレノアは、その大きなお屋敷を見上げて、つい声に出してしまった。

 遠くから見たことのある、このカーメレン公爵家のタウンハウスは、近くで見ると、思っていたよりも更に大きかった。

「いや、語彙力……」

 口をぱっかりと開けて立ち尽くすエレノアは、自分にツッコミを入れた。

 立派な門構えに気圧されつつ、エレノアは門番に声をかけた。

「エレノア様ですね。どうぞ」

 門番に促され、敷地に足を踏み入れる。

(えっと、玄関が見えないんですけど……)

 門番の後ろにくっついて、立派な庭園を横目に、玄関までの石畳を歩く。道を挟むように植えられたミモザの黄色が見事なまでに彩り、お花畑のようだ。

(こんな立派な公爵家の方が、私を名指しなんて、どんな用件なんだろう?)

 女将のお店の果実は本当に美味しい。だから、単純に「ここの果実が食べたくて」って理由だったら良いのに……!とエレノアは思った。

 でも、それだけの理由なら、わざわざエレノアが名指しにされることは無い。

 はあー、と溜息をつく。

 教会にいた頃は溜息をつく暇も無かった。今は自分に余裕があるということだろう。それは喜ばしいことだけど……。

(にしてもだよ。騎士様が現れてから、私は溜息ばかり)

 せっかく自分らしく生活出来るようになったのに、エレノアには余計な心配事が増えた。

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