ドロ甘な愛を稀血に溶かして


美織ちゃんの言っている意味が分からず、終始ポカン状態だった俺。

変な勘違いをされていると気づいたのは、美織ちゃんが後ろの席に移動した後だった。



清住(きよずみ)、来るの遅すぎ」


「修学旅行、休むかと思ったよ」


「集合場所が園庭だと思い込んでて、一人で待ってたんだ。私、恥ずかしすぎだよね~」


「ちゃんとパンフ、確認しとけ」


「アハハ~ 気を付けるね~」



男子にいじられている美織ちゃんの、笑い声。

聞きたくなくて、俺は耳にイヤホンを突っ込む。



このクラスの中にいるのかな?

美織ちゃんの好きな人。




壊れそうなくらい心臓が痛みだし、堪えきれなくなった俺。



ミュージックプレーヤーの音量を上げ

アイマスクで視界を塞ぎ

折れそうなほど強い力で、大事なシャープペンを握りしめたのでした。




< 87 / 141 >

この作品をシェア

pagetop