ハプニングは恋のはじまり


 身長が高く横幅もがっしりしている上に、目立つ赤髪で大抵は怖がられてしまうらしい。


「最初から普通に話してくれたのなんて、八重が初めてだよ」

「そう、なのですか……」

「納得いってないって顔だな」

「だって、急に手を繋ぐからそういうことに慣れていらっしゃるのかと……」


 明緋はきょとんとした後、みるみる顔が真っ赤になっていた。


「あっあれは……!すまねぇ、全く無意識だったわ……。
俺5歳の妹がいるんだよ。だからそのノリで、つい……」

「わたくしが5歳児のようだということですか?」

「いやっ、そういうんじゃねぇよ……!」


 やけに慌てて必死で弁解しようとする明緋を見ていたら、何だかおかしくなってきた。


「うふふっ」


 明緋の必死な姿を見ていたら、不思議とモヤモヤした気持ちはどこかに消えていた。


「なんで笑うんだ?」

「いえ、なんでも?」

「なんだよ!」

「なんでもありませんわっ」


 ――この時間がもっと続いて欲しい。

 鏡花のことをからかいたくなる那桜の気持ちが少しだけわかったような気がした。

 意地悪いと思うけれど、自分のことで頭を抱えて悩んでくれたり、考えたりしてくれることが嬉しい。


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