初恋のつづき
「ーーひょっとして、青春の甘酸っぱいカシオレの思い出?例のエリックくんだったり?」


小さくなっていくその背中を視線で追いながらぼんやりと眺めていれば、また後ろの方から声が飛んで来た。


「……〜〜っ!」


今度は恐る恐る振り返ると、そこにはドアの隙間からニヤリとこちらを見ている真瀬さんがいた。


……すっかり忘れていたけれど、真瀬さんもまだミーティングルームに残っていたんだった……!


どうやら、今の会話はしっかりと聞かれていたらしい。

ミーティングルームから私のいるところまではそこそこ距離があると思ったんだけど、私の腹の虫の音を拾ったお昼の件といい今の件といい、彼は地獄耳が過ぎると思う……。


「マジか。……それはなかなか、面白い展開になって来たなぁ」


私の反応でそうだと確信したのだろう。

こちらの方へ歩いてきた真瀬さんが、顎に手を当てながら先ほどまで私が眺めていた、今はもう誰もいない廊下の先をジッと見つめてぼそりと呟いた。

何だか言葉と表情が微妙に噛み合っていない気もしたけれど、まさかこんな再会ルートが敷かれているとは思ってもみなかった私は特に深く気に留めることなく。

さっき真瀬さんにうっかり名桐くんのことを話してしまったことを、ただただ後悔するばかりなのだった。


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