初恋のつづき
ちなみに私が今担当しているプレスリリースは、今秋発売の新作ルージュについて。

〝触れたくなる、唇〟がキャッチコピーの、spRINGで不動の人気を誇るRouge Sorte(ルージュ ソルテ)

〝Sorte〟にはポルトガル語で幸運という意味があるのだけど、今回はこのシリーズから三色発売される。

シックな可愛さと艶っぽさの同居するモーブピンクは限定色。

透明感溢れる深みのあるシアーボルドーと、洗練された絶妙なカラーのヌーディーブラウンは定番ラインナップに仲間入りする新色だ。

これがどの色味も本当にとても秀逸で、最初にサンプルを見せてもらった時にはもうワクワクが止まらなかった。

このシリーズを愛用してくれている方にもそうでない方にも、早く多くの方に手に取って見てもらいたいと思う。


「有賀。これ昼飯食いに行ってからゆっくりチェックするわ。お前も一緒に行く?」


カチカチ、とマウスを操作しながらパソコンに向けていた目線をこちらに流して真瀬さんが言う。

ふと時計を見ればなるほどちょうどお昼を回ったところで、広報部の他のメンバーたちもボチボチとオフィスを出て行く所だった。


「あ、行き……」


ぐぅぅー、きゅるるる……。


〝ます〟と言い切る前に、何と腹の虫が先に返事をしてしまった。

先ほどまで集中し過ぎて全く空腹を感じていなかったくせに、今がお昼時だと認識した途端にこれだ。

我ながら現金な身体というか何というか……。


「ははっ!いい返事。有賀は一度集中すると寝食を忘れるタイプだからなぁ」

「お恥ずかしい……」


どうやらそんなに大きくはないと思っていたこの腹の虫は、真瀬さんにもバッチリ届いてしまったらしい。でもそういうのもこんな風に明るく茶化してくれるような人だから、こちらとしてもとても有難い。


「いつもんとこでいいか?」

「はい!」


このあと、午後イチでRouge Sorte(ルージュ ソルテ)のプロモーションを担当して下さる広告代理店の方々とのキックオフミーティングが予定されている。

その前に真瀬さんにちょうど聞きたいこともあったから、彼御用達のいつものところは都合が良い。

私はパソコンをスリープ状態にして、簡単にデスク周りを整えてからパパッとお財布とスマホだけを手に取って、真瀬さんと連れ立ってオフィスをあとにした。




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