初恋のつづき
「だからですね、話を戻すと、今までがそういうなぎちゃんだったからこそオレは今、あなたにすごく興味津々なんですよ、有賀さん!」

「ええ……⁉︎」


一体どこから脱線していたのか。

そしてそこから戻って来た話がどうして私に行き着くのか。

なにひとつ分からないながらも渋谷さんの勢いに押され気味で聞いていれば、「ほら渋谷」と、名桐くんが唐突に渋谷さんの顎を掴んでグイッと自分の方へ向け。


「んん⁉︎な、なによ……、って、かっら!ちょっ、かっら!辛いよなぎちゃんっ!急にオレの口にチャンジャ突っ込まないでくれる!?辛いの苦手なんだってばー!」


……突っ込んだ。

渋谷さんの〝なによ〟の〝よ〟の形をした口に、ワサッと箸で攫ったチャンジャを。名桐くんが、突っ込んだ。

渋谷さんはひぃひぃ言いながら必死にハイボールを喉に流し込んで、ゲホゲホと咽せている。

彼の顎を解放した名桐くんはというと、しれっと涼しい顔をしてポテトサラダを摘んでいた。

私はそんな二人の様子がとても可笑しくて。

しかもこの感じ、名桐くん、〝受け〟なの?〝攻め〟なの?どっちなの?なんて、さっきの渋谷さんよろしく余計なことまで気になってしまって。

大惨事の渋谷さんには大変申し訳ないけれど、そんな自分も相まって、もう笑いが止まらなくなってしまった。
  

それから、渋谷さんが多少口にする話題に気を遣ってくれている感じはありつつも、楽しく会話は進んでいき。

程よく箸とお酒も進む中、「何か、今日は突然お邪魔しちゃってごめんね……!でも一人寂しく飲む予定が、お陰様でとっても楽しい夜になりました!ありがとう!」と渋谷さんがほろ酔い状態で意気揚々と途中離脱。

残された名桐くんと二人、宴もたけなわになって来た頃には、私もすっかり(したた)かに酔っていたのだった。



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