王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~
(……誰がわたしの頭の上にいろんなものを落としているのかは知らないけど、うん、これはいいきっかけになったわ。あれがなかったら、わたし、決心がつかなかったと思うもの)

 これでいのだ。

 これで、いい。

 涙が止まると、エイミーは自分の唇を指先で撫でる。

 ライオネルはどうしてキスをしてくれたのだろうか。

 最後の誕生日プレゼントのつもりだったのだろうか。

 いつもいつもキスしてほしいと追いかけまわしておきながら、いざキスされたら、急に深くなった口づけに怖くなって彼を突き飛ばしてしまった。

(殿下、怒っちゃったよね……)

 きっとライオネルはたくさんたくさん譲歩してキスしてくれたはずなのに、失礼な態度を取ってしまった。

 でも、あのキスは怖くて――そしてすごく悲しかったのだ。

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