コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
「でも…別れる時に“深端を辞めてくれ”って言ったのは向こうなのに…よく一緒に仕事できますよね…」

水惟は4年前を思い出すようにどこを見るでもない表情で言った。

「水惟ちゃん…」

「この前、流れでカフェに行ったんです…あ!もちろん仕事関係だったんですけど…」
「蒼士くんと?」
水惟は頷いた。

「“変わってなくて安心した”みたいな事を言われたりして…なんかそれも…なんていうか…私の環境をガラッと変えた張本人なのに、失礼じゃないですか?」
水惟は愚痴をこぼすように不機嫌そうな声色で言った。

「………」

「蛍さん?」
蛍はハッとした。
「あ、ごめんごめん。そうね…」

蛍はふぅっと息を吐いた。
「水惟ちゃんあのね…」
「はい…?」

「4年前、水惟ちゃんは本当に傷ついたし、それは蒼士くんのせいかもしれないけど…」
「え…?」

「うーんと…なんていうか…」
蛍は言葉を探しているようだ。

「えっと…少なくとも今の蒼士くんは、水惟ちゃんを傷つけたいなんて思ってないと思うよ。」

「言ってる意味がよくわからないです…」
水惟は戸惑いを見せた。
< 23 / 214 >

この作品をシェア

pagetop