コーヒーにはお砂糖をひとつ、紅茶にはミルク —別れた夫とお仕事です—
「水惟」
「あ、そうだった。」

水惟に若い男性が話しかけた。
ダボっとしたシルエットのシャツに細身のパンツ、髪型はゆるいパーマがかかった明るめの茶色の短め、それに薄く色のついたメガネをかけている。年齢は水惟と同じか少し下くらいだ。

「湖上さん、深山さん、鴫田さん、うちのライターを紹介させていただいてもいいですか?」

「リバースデザインの葦原 啓介(あしはら けいすけ)です。今日は休止前にお店の雰囲気を知っておきたくて来ました。よろしくお願いします。あ、ニックネームはアッシーです♪」
ややチャラい挨拶の後、啓介は三人と名刺を交換した。

「深端グラフィックスの深山です。よろしくお願いします。」

「え、その若さで深端の部長ってすごくないっスか?」

「…いえ、それほどでも。」

「いや〜深山さんは優秀だよ〜!ね、水惟。」
芽衣子が言った。

「え!?……えっと…最近のこと、よく知らないし……ゆ、優秀…なんじゃない?」
急に蒼士へのコメントを求められて水惟は思わず口籠もってしまう。


「今回の仕事って深山さんと水惟が関係修復したから一緒にやるのかと思ってたんだけど、違うんですか?水惟のあの感じ…」
蒼士と二人になったタイミングで芽衣子が聞いた。

「だったら良かったんだけど。」
蒼士が言った。

「ふーん。私二人のことってそんなによく知らないんですけど、深山さんの方から離れたんだと思ってました。それも違うんですか?」

「違わない。」

「…まあとりあえず水惟が元気そうで安心しました。」
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