翡翠の紋章

第10話

 ひつじ雲が浮かんでいる空に
オピンニクスが、飛んでいる。

 フィンレーとスカーレットは、
 オピンニクスの背中に乗っていた。

 高所恐怖症のスカーレットは、
 ぶるぶる震えては、
 目から涙を垂れ流していた。

「そういや、さっきいたうさぎは
 どうしたんだ?」

「うぇ?! なぁーにーよぉ。」

 涙を流しながら、返事をする。

「倒したのか?」

つらいのを無視して続ける。

「無敵で倒せなかったから…。
 ここに吸い込まれた。」

 スカーレットは、持っていた剣を見せた。
 フィンレーの剣についている
 エメラルドの宝石と
 似ていたが、スカーレットには、
 赤いルビーの宝石がついていた。

「ふーん。スカーレットは、
 あのうさぎが召喚獣ってことなのか?
 混乱魔法とか時空魔法でも使えるのか?
 オピンニクスは、何の技使えるんだ?」

「風を起こす…。」

 空を飛びながら、背中にいる2人に
 答える。

「ほうほう。
 風の魔法か。
 攻撃だけじゃなくて、
 使える魔法が
 増えたんだ。
 安心だな。」

「私は、直接攻撃できなそうね。
 時間魔法とか、特殊攻撃みたいね。
 って、いつになったら、地面に行くのよ。
 もう、嫌だーーー。」

 足をぷるぷる震えながら、
 オピンニクスのふさふさの体に
 しがみつく。

「もうすぐ着くぞ。」

 ばさっと体をななめに傾けて、
 空中から一気に地面へと飛んでいく。
 スカーレットは、体が宙に浮くような
 感覚が大嫌いで、言葉にならない声が
 響きわたった。

「ぐぎゃぁああぁぁあー---。」

「ひゃっほー--い。」

 フィンレーは遊園地で遊ぶ感覚で
 楽しんでいた。

 オピンニクスが向かう先は、
 真っ黒の三角錐でできた屋根が
 無数にあるお城だった。

 コウモリがたくさん飛んでいて、
 時々白く光るお化けのような
 ぼんやりと点滅していた。
 
  つたの葉が長く伸びていて、
 人がいるのかいないのか
 お化け屋敷なのか。
 不気味な雰囲気のお城だった。

「ここ?
 ドラキュラが出そうなところじゃない。」

「ここなんだろ?
 ソフィアいるの。
 なぁ。」

「あぁ。そうだ。
 ちょっと疲れた。
 わしは、もどる。」

 そういうと、オピンニクスは、
 フィンレーの剣にあるエメラルドの中に
 吸い込まれていく。

「飛んだだけで疲れるんだな。
 戦闘になったら呼んだ時
 助けてくれるのか。」

 レイピアの剣をまじまじと見ていると、
 オピンニクスの声が頭の中に響いてくる。

「必要とあれば、呼べばいい!!」

 なぜか、怒っている。

「な!! なんで、俺、怒られた?」

「休ませてあげなさいよ。
 おじいちゃんなんだから。」

 スカーレットは、地面に
 足をつけることができて、安心したようで
 ご機嫌に話す。

 フィンレーは、鞘に剣を戻した。


「さてと…、んじゃ、中に入りますか。」

 砂利が敷き詰められたお城の庭に
 足を踏み入れると、
 たくさんのコウモリたちが
 突然集まってきて、行く手を阻む。

「なんだ!? なんだ!
 チクショー、避けきれない。」

 両手で振り払っても何度も襲いかかる。
 スカーレットも同様に、顔中に目掛けて
 飛んでくる。

 目の前はコウモリだらけのまま、
 2人はお城の入り口まで力任せに歩いた。

 ただ、飛んでくるだけで、
 血を吸うわけではない。

 歓迎はされてないようだ。

 追い返そうとしている。

 逃げようとお城の中に、
 大きな音を立てて、木で出来た茶色の
 扉を開けた。

 不気味な音が鳴る。

 中に入った瞬間、コウモリたちは
 その場から消え去ると共に景色が
 入れ替わった。


 うさぎの時と同じに空間が
 捻じ曲がってるようで、
 広い宇宙のような灰色と紺色の
 ぐるぐるした世界に入り込んだ。


「今度はどうなってるんだ?!」

 コンクリートでできた真っ直ぐな道の先に
 また扉が存在してる。

 それ以外は別世界の空間があった。
 異次元なんだろうか。

「ちょっと、フィンレー、
 高いところ苦手なんだけど!!」

「そんなこと言われたって。
 さっき来た道は消えてるんだって。
 前に行くしかない!」

 フィンレーの腕に泣きながら
 しがみつくスカーレット。

 剣士たるもの、
 高所恐怖症には勝てなかった。

 恐る恐る、
 次の大きな扉を開けようとした。

 
 
 




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