辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~
プロローグ
日頃は静かな伯爵邸にメイドの悲鳴が響き渡った。

「誰か! 誰か!」

 慌てて駆けつけてきた男性使用人が、部屋の中で飛び回っている食器に目を見張る。

「またか!」

 彼の目が、部屋の隅に丸まっている子供に向けられた。伯爵邸の中でも、狭くて暗い部屋。隅に汚くなった毛布が丸まっていて、その中から小さな顔だけが突き出している。
 この子は今年五歳になったのだが、年齢の割にずいぶん小さい。

 大きく見開いた目からは、今にも涙が零れそう。だが、男性使用人は、そんなことにはかまわず、宙を飛び回っている食器を掴み、床に叩きつけた。

 毛布の中にいる子供がびくりと肩を跳ね上げる。木製の食器は床に叩きつけられても破壊されることはなく、ぽんぽんと床の上を跳ねて止まった。

「あ、ありがとう……食器を下げに来たらこんなことになってしまって」
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