辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~
第五章 お兄ちゃん達に頼みごとをされたようです
ジャンルカ・バルディー――愛称ジャン――には、忘れられない思い出がある。

 十歳年長だった兄との思い出。

『兄上、ナッツちょうだい』

『これは、俺のおやつなんだけどなあ』

 蜂蜜以外の甘味が手に入りにくい辺境で、王都から届けられる甘味には、ナッツのキャラメリゼが多かった。兄も、甘いものが好物だった。

 辺境伯領と王都の間には月に一度程度使者の行き来がある。辺境で手に入りにくい品も、使者に頼めば買ってきてもらうことはできた。

 そうやって入手した甘味を、兄は毎日、少しずつ大事に味わって食べていた。辺境伯家には百人近い騎士が在籍している。そのため、一人一人が頼める荷物の量はさほど多くない。

 そんな貴重なナッツのキャラメリゼ。自分に割り当てられた分だけでは足りなくなって、毎回兄の分まで手を出していた。

『しかたないな』

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