俺様同期の溺愛が誰にも止められない
「いただきます。うーん美味しい」
一口口にして、身もだえた。

「だろ、我ながら上出来だ」
うんうんと頷きながら、素晴も満足そう。

「一体どこで習ったのよ」

サザエカレーなんて一般的な料理だとは思わないけれど。

「覚えているか?大学一年の夏休みに同期で親睦キャンプをした時、みんなで作ったカレーを食べたお前が『サザエカレーが食べたい』って言ったんだよ」
「ええーそんなこと言ったかなあ?」
記憶にない。

「サザエカレーって何だよって言う仲間に、サザエを殻ごと茹でて冷めてから身を取り出して肝はバターで炒めるんだって、力説していたんだぞ」

大学一年の夏休みはちょうどホームシックの頃で、母さんの手料理に飢えていた。
確かに、みんなで行ったキャンプでカレーを食べて泣きそうになったのは覚えている。

「今日は例の患者の退院だったんだろ、きっと落ち込んでいるだろうと思ってカレーにしてみた」
「素晴・・・ありがとう」

私は懐かしいサザエカレーの味に感動したし、気遣ってくれる素晴の気持ちに感謝した。
そして、私の知らないところでずっと見守っていてくれたことに心が震えた。

「さあ、冷めないうちに食べるぞ」
「うん」

『愛の形は人それぞれ』優紀の言った言葉を思い出し、今こうして素晴と共に過ごす時間が幸せなのだと私は痛感した。
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