カエル化姫は愛されたい、偽俺様王子は愛したい~推し活女子と天然一途男子は最強夫婦~

不安の終わりと、そしてはじまり

 日埜静馬との奇妙な出会いの後、サロンで午後の施術の予約を確認していたら、「空きが出たところに新しい予約が入ったので、入れ込みました」と新しいスタッフに言われる。
 確認した名前にギョッとした。

 峰蒼真。

 フーレセラピーを希望で、施術者は私を指名しているという。
 今日は男性難の運勢でもあるのかな、と思った。
 とはいえ、お客さんとしてきている以上は、変な振る舞いはしないだろう、他のスタッフもいるし、と希望的推測をする。

 予約時間ちょうどに、蒼真はやって来た。
 蒼真は不愛想に入ってきて、ども、とだけ言う。

 新規のお客様にするようにカウンセリングする段階になって、
「白那さーこの前の奴と一緒に住んでるんだな」
 と言われて、げ、と思う。

「なんで知ってるの?」
「見てたから。ていうか自宅の方に行ってみたけど、不在だったから、サロンの終わりに来てみたらあいつと帰ってくの見た」
「こ、婚約者だし、当たり前じゃん」
 嘘ではないけれど、自分からこの言葉を使ったのは初めてだったので、恥ずかしさで声が高くなる。

「へぇ」
 蒼真は興味なさそうに相づちを打つ。
「権利の話しに来たんでしょ?」
「そう。土地の権利がうちの親族にある。だから、親父は朱那さんからロイヤリティを受け取っていたらしい」
「それを蒼真におさめろってこと?」

「ロイヤリティはいらない。その代わり土地の権利を行使して、立ち退きをしてもらう」
「え?」
「条件は前のとおり」
 と言ってこちらを見てくるので、私は「それはない、絶対に」と言って首を横に振る。
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