カエル化姫は愛されたい、偽俺様王子は愛したい~推し活女子と天然一途男子は最強夫婦~

不毛な争い

 昼休みに大学のカフェテリアで会った静馬は、柔らかな茶髪と柔和な顔立ちが印象的な好青年という印象だ。
「久しぶり」
 と軽快に話しかけてくる静馬に、俺は早速コミュ障を発揮する。

「ども」
 と短く返して、距離感を測る。

 しばらく会っていなかったように思うので、どんな距離感で話せばいいか分からない。ただ、面倒なやり取りは不要なので、向かいの席に座りがてら、
「白那に会っただろ?」
 と聞いてみる。

 すると静馬の顔が、ぱあっと擬音をつけたくなるくらい急に明るくなった。

 は?なに?とつい腰が引けた瞬間には、
「瑠璃也の口から女の子の名前が出てくる日が来るなんて。これまではあの子、その子、クラスの子、そんな単語しか出てこなかったのに。やっとこの日が来た!」
 と妙に熱を帯びた口調で言うのだ。

「なに、キモい、こっち見んなよ」とつい反射神経で返してしまう。

「何言われても平気だよ。瑠璃也が自分から女の子の話を出すことなんて、これまでなかった。そのわりに、周りの女の子は瑠璃也の話ばかり。ホント腹立たしい。天然モテする奴、溶けて消えればいいのにって思ってた」

 そう、静馬と接触するのは、このお経のような愚痴が始まるから嫌なのだと、たった今その状況になって思い出した。
 昔は引きずられて、数時間無駄にした記憶がある。今は引きずられてやるつもりはないので、さっさと本題に入った。
< 166 / 275 >

この作品をシェア

pagetop