カエル化姫は愛されたい、偽俺様王子は愛したい~推し活女子と天然一途男子は最強夫婦~
 その後、静馬は、「何か特別なお話出来ましたか?」「水樹家の秘密なら俺も聞きたいです」と妙に探りを入れてくる。
 静馬はどのくらいのことを知っているんだろう?と私は思う。日埜家が水樹家の女性の骨を祀っている、と言う話は本当なんだろうか。

「日埜くんは、日埜家のために動いているんですか?こうして私にオーダーしてくるのは、どういう意味があるの?」
と素朴な疑問をぶつけると、
「俺は古臭い慣習には興味ないんです。瑠璃也が吠え面かくのが楽しみなのと、そして水樹さんが気になるから動いているだけです」と答えてくる。
「吠え面」
 と私が聞きなれない言葉を繰り返すと、静馬は苦笑して、
「水樹さんが気になる、の方は汲み取ってくれないんですか?」
 と言われた。

「言うだけなら自由ですから。言い慣れてる感じだし、リップサービスですよね」
 と私が返すと、静馬は笑う。
「水樹さんって、妙に世慣れてますよね。でいて、ハグ程度で浮気を気にするとか、割と初心だし。不思議な人ですよね」

 煽られているのが分かる。
 静馬は私を瑠璃也一派の人と思っているのかもしれなかった。
 一方で私は水樹那由多さんの話を聞き、静馬を日埜一派の人として認識し始めている。

「触られるの無理なんです。ビリビリって痛いし。瑠璃也しか」
と言いかけて言葉を切ったら、静馬の目が鋭く細められた。
「瑠璃也じゃ、その黒いの、完全には払えませんよ」
 と言って、腕を掴んできて抱き寄せられる。

 ビリビリッと痛みが走った。瑠璃也の単語を出したのが間違いだったのだと思う。
 ただ、痛い!と叫んだら、離してくれる程度には理性が働いているらしい。
「ライバルを想像すると煽られるのって、男性の特徴ですか?瑠璃也と付き合っているから、私のことが気になるだけですよね」

 私はそう告げると、静馬は唇を噛む。
「そんなことはないです」
 と静馬は言うけれど、言葉を重ねても、膠着状態になるだけだと思った。

 静馬は瑠璃也に対抗意識があるようだったし、瑠璃也もなぜか静馬の話になると、発言が過激になる。
 今日は帰りますね、と言って私は逃げるように去った。
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