カエル化姫は愛されたい、偽俺様王子は愛したい~推し活女子と天然一途男子は最強夫婦~
 でも、ある日。

 自分から触れてきながら、こっちから触れば、「触らないで」「嫌いになっちゃう」と変なことを言う女の子に出会ったしまった瞬間に、殻がバキバキと割れるのを感じた。

 マズい、と思った。俺には「触らないで」が「触って」に聞こえたし、「嫌いになっちゃう」が「好きになっちゃう」に聞こえたのだ。

 触った瞬間に、見たこともないような怯えた顔でこっちを見た彼女に、心臓が鷲掴みにされた。眉がギュッとよって、切迫した表情になる。

 なんで、そんな顔すんの?

 そう思う一方で、キラキラとそこの子周辺で光るものが見えた。

 パーソナルスペースをとらないと。興味があってもないふりをしないと、と思っていたのに、身体は真逆の行動をとる。

 離れようと動く彼女になにがなんでも触れておかなければ、と思った。
 嫌がられるたびに、近づきたくなる自分の行動理由が分からない。

「嫌いになっちゃう」と言われたとたんに、ここで踏み出したら、どうなるんだろう?という好奇心が生まれてしまった。

 俺はこれまでしたこともない方法で、彼女にキスをする。

 女の子に強引に何かをすることなんて、生まれてこの方したことはない。嫌だと言っている子に、なんてひどいことをするんだろう、と思った。
 セクハラか、場合によっては強要罪になるかもしれない。

 彼女は目を見開いて、俺の顔を真っすぐに見る。好みの顔を見るにしては、あまりにも複雑な顔をしていた。
嫌悪や怯え、戸惑いがないまぜになっているのが、分かる。

 力強く頬を叩かれて、「大嫌い」と言われた瞬間に、自分をくるんでいた殻が取れてむき出しになってしまう。

 この瞬間、俺は水樹白那に落ちてしまった。
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