つぐむちゃん、口を開けて。


 千鶴くんはいつだってわたしの気持ちを見透かしていた。


 でもね。

 言わなくても伝わるからって、言わないってことはしたくなかったの。



「つぐむちゃん、口開けて?」

「……?」



 歪んだ視界のまま、言われた通りに開ける。



「むぐ」



 剥かれたみかんが口に入れられたと気付いたのは、口内で咀嚼した後。



「美味しい?」



 こくこくと頷く。



「っ……も……かわい……」



 唇が重なった。

 口の中のみかんを共有するように、もぐもぐと唇が動かされる。


 柑橘系の香り、熱い千鶴くんの舌。



「これからは、ちゃんとつぐむちゃんに許可取るね」

「……許可?」



 なんの話だっけ……。



「俺の、内緒についてのこと」



 千鶴くんは、とろんと甘い笑顔を浮かべた。


 詳細がわかるのは、すぐ近くのこと。

 時間で言えば、数分後。




おわり


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