クセのある御曹司を助けたら「運命だ」とか言われました。
◆第一章


 唯一の楽しみはまだ引き落としされていない給料を目にした時かもしれない。


 私の実家は和食屋を経営している。昔はそれなりにお客様が足を運んでいたのだが今は経営難だ。実家を少しでも助けるべく毎月10万ほど家の口座に振り込んでいるけれどそれでもまだまだ家計は楽にはならない。


 というのも、私の家には500万という額の借金がある。今年中に500万を返済できなければお店を売却しなければならないと、父が泣きそうな顔をしながら訴えてきた。


 私、羽賀穂香(はがほのか)は24歳の看護師3年目。仕事はとてもハードで、家に帰ってからも夜遅くまで勉強する毎日を送っている。


 時々、自分がなんのために働いているのか分からなくなる。働き始めた時は「一人でも多くの患者に寄り添いたい」という純粋な気持ちだったのに対して、今は「家計を助けるために死に物狂いで働かなくてはならない」という思考に切り替わっている。


 給料は手取りで毎月24万円ほど。3万円という安い賃貸に住み続けても貯蓄はできない。


 遊べる余裕すらない、心の余裕もない、彼氏もいない。仕事も楽しくない。




 ……私は何のために生きているのだろう。

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