氷の華とチョコレート

 いつもより長いKISS。真間さんがこんな風になるのは初めてで……。

 もしかして、私と同じ気持ちだったのだろうか? 離れた唇を寂しいと感じて、見上げた彼の顔、いつもと違う熱を帯びた瞳を見つめた。


「……離れがたい、ですね」

「うん……」

「……」

「……っ」


 振り切るように、頭を振って、真間さんはクシャッと笑った。


「……でも、今日は帰るよ?」

「はい、気を付けて」


 そのまま、部屋の前まで送ってくれて、真間さんは、いつものふんわりとした笑顔を残して帰って行った。



「はぁ~……」


 部屋に入っても、おさまらない鼓動に、私は、大きく深呼吸を繰り返す。立っているのが辛くて、その場にしゃがみこみそうになる。あわててベッドまで歩いて、腰を下ろして、自分をギュッと抱きしめて支えた。


「じゅうでん、凄い……」


 アレだけでこんなになる私には、まだ夜を一緒に過ごすなんて、早かったのかも知れない……。


「寝れるかな?」


 その夜は、ドキドキする胸を押えて、何度もため息をついて、自分を落ち着かせるのに精一杯だった。



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