財閥御曹司は、深窓令嬢に一途な恋情で愛し尽くしたい。
突然の縁談



「愛百合ちゃん、こっちもお願いできる?」

「あ、はい。今行きますっ!」


 私は、雑巾の水を絞り呼ばれた方に向かった。

 ここ――旧槻折(つきお)伯爵家は、『皇室の藩屏』として位置付けられた華族制度により明治17年に華族令が制定されると、公・侯・伯・子・男の五爵位により序列化され、それに伴い伯爵位を賜わった家だ。

 そこの娘である私、槻折愛百合(あゆり)は旧華族令嬢となる。
 だが、私の母と槻折家現在当主の一夜の過ちにより出来た子だ。母が亡くなる前はパン屋を営みながら普通に暮らしていたが、母が亡くなりそのことを知った旦那様がこの家に連れて来て一応は養女となった。

 でも、令嬢としてではなく使用人という立場で暮らしている。

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