シテくれないわたしの彼氏~モンスターバトル~
 このままで保護されては彼があまりにも気の毒だと思ったので、衣服を着せて身なりだけは整えておいた。

 やって来たスタッフは特に何か問い質すこともなく、彼をストレッチャーに乗せ、「低レベルのシグナルなので、数時間後には回復すると思います、ご家族にご連絡してありますので」と言って去っていく。

 スタッフに交じって彼そっくりな男性もやって来て、私に声をかけてきた。

「初めまして。あんた、単なるお嬢さんってわけじゃなかったんだな」
「悪いけど、単なるお嬢さんだよ」

「じゃ、オレともやってよ?」
 その人、岸井成はにやにやした笑いをはりつけながら、私の顎に指を添えてくる。

 彼とそっくりな顔には、彼とは似ていない表情が浮かんでいた。

「ビジュアルは最高だけど、岸井さんみたいないい匂いがしないので、好みじゃないかな。それに彼があなたを警戒しているみたいなので、お断りします」
 私の言葉に、おかしくてたまらないという風に、大笑いする。

「オレはほとんど同じ遺伝子を持ちながら、性質が少し違う信が今後どんな風になるのか気になるだけ。信は警戒してるけど」
「ふーん」

「信も面白い奴に好かれたもんだな~今後に期待」
 そう言って、岸井成は去っていった。
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