公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

疲れているなら

「久し振りだな、ルネリア」
「うん、久しぶりだね、サガード」

 私は、久し振りにサガードと会っていた。
 頻繁にラーデイン公爵家を訪れていた彼だったが、最近はあまり来なくなっていた。本当に久し振りの来訪なのである。

「ふぅ……」

 客室の椅子に座りながら、サガードはゆっくりとため息をついた。
 もしかして、疲れているのだろうか。ここに来なくなったのだから、最近は忙しかったのだろうし、その可能性は高い。

「サガード、大丈夫? 疲れているの?」
「うん? ああ、少しな……」
「何かあったの?」
「まあ、色々とあったんだ……」

 私が問いかけてみると、サガードは素直に答えてくれた。
 やはり、忙しくしていたようだ。彼は、王子である。きっと、私の想像できない色々なことがあったのだろう。

「疲れているなら、休んでもいいよ」
「休む?」
「うん、お昼寝するのもいいんじゃないかな?」

 私は、サガードにそんな提案をしてみた。
 見た所、彼は少し眠そうである。疲れが溜まって、休みたくなっているのだろう。
 それなら、寝かせてあげたい所である。変にこじらせて、倒れられたりして欲しくはない。

「いや、流石に昼寝するのは……せっかく来たんだし」
「そんなこと言わずに、さあ」
「え?」

 私は、自らの膝を叩いて、サガードに眠るように促した。
 すると、彼は目を丸くする。どうやら、驚いているようだ。

「どうかしたの? サガード?」
「いや、それはどういうことなんだ?」
「え? 膝枕だよ」
「……膝枕?」
「うん、オルティナお姉様とか、イルフェアお姉様とか、私にいつも膝枕してくれるんだ」

 私の言葉に、サガードはぽかんとしている。
 それはなんというか、訳がわからないといった感じだ。

「あ、膝枕がわからないの? あのね、膝を枕にして眠るんだよ」
「いや、それはわかっているけど……」
「そうなの? それなら、どうしたの?」
「いや、そういうことはあまり良くないんじゃないか?」
「良くないの? どうして?」
「どうして? どうしてか……」

 サガードは、何かを考えるような仕草をしていた。
 膝枕が駄目な理由、それについて彼もよくわかっていないようだ。ということは、それは誰かから言われたことだということなのだろう。
 そういえば、私も聞いたことがある。貴族の男女が触れ合うのは、はしたないことだと。
 つまり、サガードはそれを気にしているということなのだろう。

「サガード、大丈夫だよ。ここには、私達しかいない訳だし、それに私達は貴族である前に、友達なんだし」
「友達……友達同士で、そういうことをするものなのか?」
「え? えっと……あ、ケリーも膝枕してくれたよ」
「それなら、いいのか?」

 サガードは、頭を抱えていた。
 やはり、王族として、そういう所はきちんとしておきたいのだろうか。
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