公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

大きな愛を

 私は、アルティアとともに庭に出てきていた。
 この庭とも、もう随分と長い付き合いになる。私がラーデイン公爵家に来てから、ここはずっと私の憩いの場だ。
 それはきっと、アルティアにとっても同じだろう。なぜなら、彼女も私と一緒にここによく来ているからだ。

「今日は温かいね……」
「うん、そうだね……」

 私は、アルティアとともに庭のベンチに座った。そこからは、様々な花が見える。
 ここから見える景色は、とても綺麗だ。それは、庭師のダルギスさんが、丹精を込めてこの庭を整備しているからだろう。
 私もアルティアと一緒に時々手伝っているが、このように庭全体のことを考えることはできない。やはり、プロはすごいということなのだろう。

「あ、蝶々……」
「綺麗だね……」
「うん!」

 庭には、様々な生物が集まっている。自然が溢れるこの場所には、そういう生物がよく訪れるのだ。
 アルティアも、そういう生物とはよく触れ合っている。彼女は、昆虫も爬虫類も、特に怖がったりしないのだ。
 小さな頃から、自然の生き物と触れ合うことはいいことである。そうアルーグお兄様やカーティアお義姉様は言っていた。
 自然の中で育ち、それが当たり前だった私にはよくわからないが、そういうものなのだろう。

「そっと……そっと……」

 アルティアは、ゆっくりと蝶々に近づいていく。私も、彼女と同じように音を立てずに近づくことにする。
 花の蜜を吸う蝶に目を向けながら、私はアルティアの顔を見る。彼女は、とても楽しそうだ。表情にはあまり出ていないが、それでもそれがわかる。
 そんな彼女を見ていると、私の昔のことを思い出す。私も多分、こんな顔をしていたのではないか。そう思ったのだ。

「叔母様、どうかしたの?」
「ううん、なんでもないよ」

 彼女の笑顔を、ずっと見ていたい。私は、ぼんやりとそんなことを思った。
 もしかしたら、私を愛してくれた人達も、そんな風に思っていてくれたのかもしれない。
 この屋敷に引き取られてから、私は皆がどうしてあんなにも優しいのかわからなかった。でも、今ならそれがどうしてなのか、はっきりとわかる。
 それはきっと、私自身が同じように愛を注がれたからなのだろう。

「本当になんでもないの? 私の顔を見て、にやにやしていた気がするけど……」
「それは、アルティアが可愛いからだよ」
「可愛い? そうかな……」
「うん、そうだよ」

 私の言葉に、アルティアは笑顔を見せてくれた。恐らく、喜んでいるのだろう。
 本当に、彼女は可愛い姪だ。いや、彼女だけではない。他の姪っ子も、それに甥っ子も、皆可愛いとそう思う。
 そんな皆を、私は大切に思っている。この感情を、私はいつまでも忘れないだろう。

 私が皆に愛情を注がれたように、私も皆に愛情を注いでいきたい。姪っ子にも甥っ子にも、いずれは私自身の子供達にも。
 アルティアを見ながら、私はそんなことを思うのだった。
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